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3件 · 1 / 1ページ小説 · 2026-09-09 推しが、隣の部屋に引っ越してきた
築二十年、壁の薄いコーポひまわりの202号室に、引っ越してきたのは、私の推しだった。 二人組ユニット「ミルクティーズ」のソラ。三年間、客席のいちばん後ろで水色のペンライトを振ってきた相手。 壁の向こうで、毎晚、歌の練習が聞こえる。サビの入りを十七回。 私は「小泉さん」。隣は「空野さん」。醤油を貸して、まだ返ってきていない。 本名でファンレターを出したことは、言えない。 壁が薄くて、困る。壁が薄くて、よかった。
しゅう1作品を開く →小説 · 2026-09-07 まだ聞こえる
二月に階段から落ちて、それきり目が開きません。動きません。声も出ません。聞こえてはいます。 この本に、見えたものは一つも書いてありません。書けるのは音と、触られた感じと、温度と、匂いだけです。時計は読めないので、時刻は音の順番から推し量ります。カーテンが順に開く音、車輪の一つが鳴る配膳車、詰所の申し送り、清拭の湯、掃除機。 二十七年タクシーに乗っていたので、窓の外の車の音から、どの道をどの時刻に走っているかは分かります。 吸引は一日に六回から八回。それが一番つらい。 指は動きません。まばたきで合図もできません。最後まで、伝わりません。 動けない人物の一人称。全十章。
しゅう1作品を開く →小説 · 2026-09-07 死神は推しの解散ライブに間に合わない
新人死神の初仕事は、解散ライブ直後に死ぬ人気アイドルの魂を回収すること。ところが本人は『その前に、客席の一人を助けたい』と言い出した。残り47分、死神と推しの人生最後のアンコール。
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