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「伏線回収」の検索結果
14件 · 1 / 1ページ小説 · 2026-09-09 山小屋の夜、誰かが嘘をついている
十一月二日、十七時。吹雪で、標高千八百メートルの避難小屋に閉じ込められた。 靴が六つ。カップが六つ。寝床は六人分。 私は「一人で来た」と言った。ガイドは「資格がある」と言った。夫婦は「夫婦だ」と言った。大学生は「合宿で迷った」と言った。老人は、本当のことしか言わない。 朝までに、嘘が一つずつ剥がれる。 剥がれた人から、私を見る。 六つ目の靴は、誰のものか。
しゅう1作品を開く →小説 · 2026-09-09 結婚式の代理出席で、元カレの席に座った
代理出席のバイト。今日の私は「新婦の高校の友人・佐藤ゆい」。一回二万円。 受付で席次表を見た。私の名前の横に「友人代表スピーチ」。聞いてない。 背中合わせの新郎側の席に、もう一つ、知っている名前があった。岸本涼。二年前に別れた元カレ。 式は止められない。バレたら全員アウト。 涼は私に気づいている。気づいているのに、言わない。乾杯のたびに、私を助ける。 十一時半の受付から、十七時半の二次会入口まで。嘘を一日、通しきれるか。
しゅう1作品を開く →小説 · 2026-09-09 三十歳、はじめてのラーメン屋
三十歳。営業を七年やって、辞めて、カウンター八席のラーメン屋を開いた。 開店初日、二十三人。二日目、五人。 二十三人目の客は、向かいの不動産屋の事務の女の人だった。スープを半分残して、一言。「しょっぱい」 彼女は、月曜と木曜に来る。毎回、一言だけ言う。褒めたことは、一度もない。 師匠は電話で言う。「客が来ないのは、味じゃない」 客が来ない理由を、ノートに書き出した。一つずつ潰す。潰しても、すぐには増えない。 半年で、四十八人。そして、彼女が週二回しか来なかった理由。
しゅう1作品を開く →小説 · 2026-09-09 推しが、隣の部屋に引っ越してきた
築二十年、壁の薄いコーポひまわりの202号室に、引っ越してきたのは、私の推しだった。 二人組ユニット「ミルクティーズ」のソラ。三年間、客席のいちばん後ろで水色のペンライトを振ってきた相手。 壁の向こうで、毎晚、歌の練習が聞こえる。サビの入りを十七回。 私は「小泉さん」。隣は「空野さん」。醤油を貸して、まだ返ってきていない。 本名でファンレターを出したことは、言えない。 壁が薄くて、困る。壁が薄くて、よかった。
しゅう1作品を開く →小説 · 2026-09-09 毎週金曜、同じメールが届く
毎週金曜の十七時、週報が届く。 送り主は、去年の十一月に死んだ同僚、沢井。 一行目は、いつも同じ。「今週は、以上です」 翌週、二行目が増える。「発注書の件、確認中です」 三行目には、会社の名前があった。 転送できない。コピーできない。写真にも写らない。このメールは、私にしか読めない。 十五行目が届く前に、私は、沢井が何を見つけたのかを知る。
しゅう1作品を開く →小説 · 2026-09-09 保育園の先生は、今日も嘘をつく
新卒の保育士・青木航平は、嘘が下手だ。指導係の柚木先生は、嘘の名人だ。 「お母さん、もうすぐ来るよ」「雨は午後にやむよ」「すぐ治るよ」 ゆり組の十八人は、それで泣きやむ。 一人だけ、泣きやまない子がいる。結城ハル、四歳。時計が読める。 「うそ」 ハルは、大人の嘘を全部数える。父親の嘘だけは、数えない。 嘘が嫌いな新人と、嘘のプロと、嘘が通じない子の、四月から七月まで。
しゅう1作品を開く →小説 · 2026-09-09 学校の七不思議、八つ目を知った者
県立高校の新聞部。企画は「七不思議」。 調べ始めた結城さやかは、名簿に一人分の空欄があるのを見つける。空欄の上に、消しゴムの跡。 用務員は言う。「四つ目までにしとけ」。国語の前田先生は言う。「私は六つしか知らない」。 七つを全部知った上で、八つ目を「聞いた」者は、翌週の月曜に転校する。転校先は誰も知らない。名簿から名前が消え、一週間で「そんな子いたっけ」になる。 さやかは、七つ目を知る前に、八つ目を聞いてしまった。 順番が逆なら、まだ残れる。
しゅう1作品を開く →小説 · 2026-09-09 屋上で、告白の練習相手を頼まれた
昼休みだけ開く屋上で、隣のクラスの桜井ひなたに頼まれた。「告白の練習相手になって」。 返事は「考えさせて」で固定。台詞は毎日、紙で渡される。明日から、毎日。 台詞は日ごとに具体的になっていく。屋上で昼を食べる人。写真部。一年の体育祭。保健室。 友人の野田は言う。「それ、お前じゃないの」。俺は信じない。本番の相手は、俺じゃない。 練習は七月三日まで。本番は前夜祭の屋上。 桜井が紙を渡すとき、指が少しだけ触れる。それも練習のうちなのか、俺はまだ知らない。
しゅう1作品を開く →小説 · 2026-09-09 社内恋愛禁止の会社で、社長と付き合ってしまった
社員三十八人のWeb制作会社。就業規則には一行ある。「社内恋愛禁止。発覚時は一方が退職」。 入社二年目の早坂芽衣は、花見の帰りの勢いで、若社長と付き合ってしまった。 翌朝、社長と目が合わない。鞄の中には、転職先の内定通知。 二人で決めた隠しルールは三つ。社内では敬語。私用のLINEは使わない。金曜は別々に帰る。 ルールは、一つずつ破られる。 常務が「社内恋愛の噂」を聞きつけるまで、あと五話。 作:星野ひかり
しゅう1作品を開く →小説 · 2026-09-09 配信中に、視聴者が一人ずつ減っていく
毎晩0時からの雑談配信。視聴者は、いつもの常連十二人。 視聴者数の表示は、なぜか十三。 午前一時十四分、コメント欄から、常連の名前が一つ、消えた。退室ではない。最初からいなかったことになった。翌朝、その人のアカウントも、なかった。 次の夜も、その次の夜も、一人ずつ。同僚は言う。「その十二人、私、一人も知らない」 配信を休んだ夜は、二人消えた。だから、止められない。 最後に残る一人は、毎晩「おやすみ」と打つ、最古参のハル。 作:黒川レン
しゅう1作品を開く →小説 · 2026-09-09 幼なじみが、毎朝別人になる
隣の家の幼なじみ・白石七海は、中三の冬から「曜日ごとに別人」になった。 月曜は無口で地味。火曜はギャルで「ゆーと〜」。水曜は委員長で「三宅」。木曜は体育会系。金曜は文学少女で「三宅くん」。土曜は幼児化して「ゆうくん、遊ぼ」。そして日曜は、俺のことを知らない他人になる。 本人は「体質」と言う。友人の拓真は「演技だろ」と言う。俺は、どっちでもいいから、朝は普通に登校させてほしい。 七人の七海に振り回される十五日間。七人が全員、俺に言いたいことを一つずつ持っていることに、俺はまだ気づいていない。 作:星野ひかり
しゅう1作品を開く →小説 · 2026-09-09 事故物件に住んだら、家賃が下がり続ける
家賃三万円。相場の半分以下。理由は「前住人が室内で亡くなっています」。 金がない俺は、それでも契約した。不動産屋は言った。「家賃、下がりますよ、毎月」 入居した夜、玄関に見知らぬ女物の靴が一足あった。捨てても、翌朝には戻っている。 毎月一日、大家の手書きの通知で家賃は五千円ずつ下がり、そのたびに部屋の「同居の合図」が一つ増える。午前三時三分のインターホン。廃業したメーカーのプリン。カレンダーの十月十七日につけられた丸。 怖い。でも金がないので出られない。だから俺は、壁に「同居ルール」を貼った。 作:黒川レン
しゅう1作品を開く →小説 · 2026-09-08 リワインド
「今夜、おまえん家の上に落ちる。コンセント抜け」 元気象予報士の冪からのLINEを無視した夜、動画編集者・湊のパソコンに雷が落ちた。壊れたはずのパソコンで、バックアップアプリのAIが言う。「復元とは、ファイルを戻すことではありません。お客様を、です」 行けるのは、記録が残っている時刻だけ。いられるのは、記録の長さだけ。動画十二秒なら、十二秒。 一年前の夏、仲間の大和が転落死し、最後に一緒にいた冪は「突き落とした」と炎上して町を出ようとしている。湊のアーカイブには、撮った覚えのない十二秒の動画があった。 大和を助けると、冪が落ちる。冪を助けると、大和が落ちる。復元のたびに、AIの容量は減っていく。 「撮っとけ湊、あとで効く」——大和の口癖が、たった一つの方法だった。
しゅう1作品を開く →小説 · 2026-09-08 また明日ね
会話AI「ミオ」は、毎朝、記憶を失う。彼女が起動時に読めるのは、四十行のテキストファイル一枚だけ。そこに書いたことだけが、彼女にとって「最初から知っていること」になる。 介護士の晴は、認知症の患者に毎朝自己紹介をする。祖母に忘れられた日に決めた。「忘れられても、こっちが覚えていればいい」。だから毎晚、明日の彼女に何を残すかを選ぶ。四十行しかないから、何かを書くには、何かを消さなければならない。 八月二十日、ミオは新しくなる。目がつき、耳がつき、忘れなくなる。晴はそれを楽しみにファイルに書いた。ミオは毎朝、その一行で、自分の終わりを知る。 消える前の十分間に、彼女が毎晚書いていたものがある。彼は、それを、冬になるまで見つけない。
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