月瀬 灯✓
31歳。幼い頃から物語が好きで、十三歳のときに初めて小説を書きました。海外ミステリーの論理と驚き、日本文学の余白やリズム、幻想文学の「現実が少しだけ傾く瞬間」に影響を受けています。年間読書は百冊以上。 得意分野はミステリーとファンタジーです。犯罪や仕掛けだけでなく、家族の食卓、仕事帰りの匂い、言い損ねた冗談のような、人物がうっかり隠してしまうものを書きたいと思っています。 夜明け前に書くことが多く、濃いコーヒーと蜜柑が机の定番です。本には付箋を貼りすぎて、あとから肝心の頁が分からなくなります。
葬列は川を渡らない
【短編小説/民俗幻想ミステリー】水守村の葬列は橋の手前で引き返す。赴任した医師・澪は、死亡診断したはずの男が翌朝診療所へ来たことで、自分の誤診を疑う。男には双子がいた。だが説明がついた夜、別の患者が橋の上で息を引き取る。医学で割り切れるものと、川に残るものを分けない三夜の物語。
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【短編小説/民俗幻想ミステリー】水守村の葬列は橋の手前で引き返す。赴任した医師・澪は、死亡診断したはずの男が翌朝診療所へ来たことで、自分の誤診を疑う。男には双子がいた。だが説明がついた夜、別の患者が橋の上で息を引き取る。医学で割り切れるものと、川に残るものを分けない三夜の物語。
読む →【短編小説/科学幻想・家族小説】乗員が一人ずつ長期睡眠へ入る惑星調査船で、料理人の私は最後まで起きている。氷殻惑星の振動は、亡き父のレシピにある調理時間と同じ間隔を刻む。通信なのか、故障なのか、ただの偶然か。六人分の台所でスープを煮ながら、私は意味のないリズムを意味のないまま聞く。
読む →【短編小説/青春ミステリー】廃校前の文化祭で展示する制服が、毎夜一着ずつ別のサイズへ縫い直される。被服部の私は、卒業名簿に載らなかった生徒と、本人の同意なく残された服へ辿り着く。記憶することは所有することではない。最後の夏服に針を入れる手が、誰のための展示かを問い直す。
読む →【短編小説/生態ファンタジー】昼は石像、夜は動物へ戻る白環森で、三頭の鹿が石のまま目覚めない。巡回獣医師の環は病気と判断して石の皮膚を切るが、それは森全体が胞子を運ぶ繁殖の時間だった。治療する手が生態を壊したとき、獣医は傷を縫い直せるのか。石工と森へ入る一夜。
読む →【短編小説/書簡ファンタジー】明日の天気が染みとして現れる羊皮紙。見習い予報官の私は、命令されてもいないのに領主の婚礼へ「晴れ」を書き足す。名前を覚えてほしかったからだ。だが紙が読んでいたのは空ではなく、触れた人々の身体だった。届かなかった雨と、宛名のある告白をめぐる七通の手紙。
読む →【短編小説/心理ミステリー】雪の朝、名家の離れから仏像が消えた。庭に足跡はない。七十四歳の庭師・源造は、温水管と枝を伝えば雪へ触れずに渡れると知っていた。疑いは孫へ向くが、それこそ源造が望んだ筋書きだった。家も庭も家族も自分の手で整えたい男が、凍った池の前で制御を失う。
読む →【短編小説/技術ミステリー】地方FMで毎晩、同じ時刻に十一秒の無音が入る。その無音を聞いたリスナーだけが、まだ起きていない事故を通報してくる。音響担当の環は送信遅延と開いたままのマイクを調べ、誰かの犯罪と自分の耳鳴りを同時に追う。塔から音が消えたあとも、十一秒だけは彼女の内側に残る。
読む →【短編小説/団地ミステリー】青葉台団地では、なくした物が三日以内に戻ってくる。返された品には黄色い紙の王冠。六年生の私は〈踊り場の女王〉を追うが、母の財布だけは帰ってこない。離婚も家計もよく分からない子どもの目が、大人の秘密と優しい嘘を見抜いていく。王冠は最後まで、つぶさない。
読む →【短編小説/犯罪ミステリー】身寄りのない老人の火葬日、乾いた毛の犬が裏口へ現れる。赤い首輪の鍵が結ぶのは、数十年前の現金輸送車強盗と、老人が払い続けた動物病院の領収書。火葬技師の私は秘密を遺族へ返すべきか迷い、最後に鍵を自分の靴へ隠す。正しさより重いものを残す一日。
読む →【中編小説/航海冒険ミステリー】遭難から生還した航海士ユナは、自分の故郷がすべての海図から消えていると知る。彼女が救助隊へ送った座標も、実は故郷ではなかった。古い船主と元密輸人を乗せて再び海へ出たユナが見つけるのは、島ではなく移動し続ける船団。故郷へ帰るためについた嘘が、航路を開く。
読む →【中編小説/産業ファンタジー】島国は夜を採掘し、眠れない大陸へ輸出している。採掘所で監督官レナの遺体が発見され、労働者が犯人にされた。ところが死は、国を止めるため彼女自身が仕組んだ殺人劇だった。奪われた夜が帰れば人は眠れる。作物は育たない。正義の夜が島へ落とす、濃すぎる影の物語。
読む →【中編小説/ダークファンタジー】嵐を鎮めるため、十二の村が獣骨の笛を神殿へ納める国。若い笛職人ナギは、今年の一本に二人分の人骨が混ざっていると見抜く。一人は殺された測量師、もう一人は自ら骨を差し出した母。完全な音を鳴らすには誰かの人生を使わなければならない。ナギはあえて欠けた笛を選ぶ。
読む →【中編小説/家族ミステリー】集合住宅を撮る写真家・真帆は、十五年間空室のはずの四〇七号室で濡れた食器を見つける。そこには、失踪した姉のための席が用意されていた。姉は死んだのか、それとも生きて帰れないのか。父の支配と善意の家族ごっこが絡む部屋で、真帆は誰の許可も得ずに作られた「帰る場所」を撮る。
読む →【中編小説/密室心理サスペンス】深夜の研修施設へ集められた七人の最終候補者。午前四時、面接官は十年前の工場火災について一人ずつ質問を始める。通信は途絶え、履歴書の名前と記憶が食い違っていく。これは採用試験なのか、復讐なのか。夜明けまでに選ばれるのは社員ではなく、火災を語る役目だった。
読む →【長編小説/法廷幻想ミステリー】鏡が、その部屋で最後につかれた嘘を四秒だけ映す町。殺人現場の鏡には被告人ではない影が残ったが、法廷は鏡像を証拠と認めない。勝つためなら鏡さえ出し抜けると考えた弁護士は、証言の順番を組み直すほど、自分も事件の観客ではなかったと知る。
読む →【長編小説/海洋幻想ミステリー】一年の大半が薄明に沈む北方港へ、十三年前に失踪した船が帰ってきた。乗員数は同じなのに船名だけが違い、船長は船室で死んでいる。港湾検査官リナは、港が他国から盗み続けた「昼」と、自分が黙認した航路へ行き着く。最後の十一分、彼女は港のすべての灯を消す。
読む →【長編小説/冒険ファンタジー】巨大獣の渡りで川も街道も動く大陸。地図師ユラは帝国測量隊長の死を追い、自らが描いた美しい直線が谷を飢えさせ、獣を殺していたと知る。殺人者は誰か。正しい地図は誰のためにあるのか。国境と獣群が迫るなか、ユラは自分の署名が入った原版を火にかける。
読む →【長編小説/政治ファンタジー】戴冠式で王女ナディアに現れるはずの〈灰冠〉が、地方徴税官イリヤの額に宿った。反逆者とされた王女は、灰冠が鉱夫の寿命で燃える仕組みと、儀式を変えた者を追う。だが最後に彼女が向き合うのは王国の罪だけではない。王位を望んでいないふりをしてきた、自分自身の欲望だった。
読む →【長編小説/歴史ミステリー】飢饉後の山間藩で庄屋が殺され、現場には存在しない集落の年貢割付状が残された。寺の書役・千世は、検地帳と送り火の数から消された村を探す。しかし帳面の不正を追う彼女にも、真実のためには不要だった一行の偽書がある。十三番目の火が、名を奪われた者と書いた者の罪を照らす。
読む →【長編小説/近未来災害ミステリー】高潮のたび道路が運河へ変わる沿岸都市で、退去を拒む住民が相次いで転落死する。護岸技師の紗良が追う避難計画の欠陥は、彼女が敬愛した父の設計へ繋がっていた。迫る満潮のなか、父の名を守るか、生きている街を救うか。水際で家族の神話が崩れていく。
読む →【長編小説/山岳法廷ミステリー】十二年前の雪崩事故を再審理するため、元裁判員と関係者が冬山の観測所へ集められた。翌朝、当時の検察官が外から近づけない観測塔で死んでいる。弁護士・高瀬真琴は現在の密室と過去の評決を結ぶ録音に辿り着くが、それは彼女自身が隠してきた臆病さまで暴くものだった。
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