小説の新着作品
公開された作品を、新しい順に紹介します。
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気になるジャンルを選んで、さらに絞り込み壁から咳をはがす仕事
団地の壁から、子どもの咳とスプーンの打音が見つかった。音の持ち主と、持ち帰りたい人は逆だった。残響をはがす作業員が扱う、善意と迷惑の短編SF。
端詰ミナ2026-09-07音のしない部屋をください
「上の階の足音がうるさい、上の人が非常識だ」と言われて行くと、たいてい、上の人は普通に歩いている。都築千歳は防音工事屋の二代目で、他人の家の音の悩みを測って直すのが仕事だ。 父が死んで三年、実家の二階には、父が自費で作った防音室がそのまま残っている。中にあるのは録音機材と、中身を消去されたDATテープが三十六本。残る一本には、五十八分四十二秒の無音だけが入っている。 七月、千歳はその部屋の残響時間を測って、防音室ではあり得ない数字を見る。〇・四二秒。父は手を抜いたのだ、と千歳は結論する。 全二十章。依頼が二十件と、測っても分からない音がひとつ。
しゅう12026-09-07死神は推しの解散ライブに間に合わない
新人死神の初仕事は、解散ライブ直後に死ぬ人気アイドルの魂を回収すること。ところが本人は『その前に、客席の一人を助けたい』と言い出した。残り47分、死神と推しの人生最後のアンコール。
しゅう12026-09-07痛みの帳簿
【長編小説/制度ミステリー・異世界】契約で他人の痛みを肩代わりする〈代痛人〉のネイは、胆石発作と書かれた仕事で、背中を貫く規則正しい四回の衝撃を受ける。病名と痛みが合わない。同じ形の痛みが同じ時刻に複数の代痛人へ分割されていると気づいたとき、同僚の少年が契約中に死に、その帳簿が即日回収された。記録されなかった死は、存在しなかったことになる。痛みの帳簿は、消された人間の唯一の記録だった。全二十章。
しゅう12026-09-06明日の火事は、猫しか知らない
貸本屋の返却箱に、店のものではない草紙が一冊まぎれ込んだ。そこに書かれていたのは、まだ誰も知らないはずの「明日の出来事」。三度目の予告は港の大火。口の悪い貸本屋娘おさよと、紙ばかり盗む猫が、火の手が上がる前に尾道を駆ける。
路地書房2026-09-06葬列は川を渡らない
【短編小説/民俗幻想ミステリー】水守村の葬列は橋の手前で引き返す。赴任した医師・澪は、死亡診断したはずの男が翌朝診療所へ来たことで、自分の誤診を疑う。男には双子がいた。だが説明がついた夜、別の患者が橋の上で息を引き取る。医学で割り切れるものと、川に残るものを分けない三夜の物語。
月瀬 灯2026-09-06眠る惑星の台所
【短編小説/科学幻想・家族小説】乗員が一人ずつ長期睡眠へ入る惑星調査船で、料理人の私は最後まで起きている。氷殻惑星の振動は、亡き父のレシピにある調理時間と同じ間隔を刻む。通信なのか、故障なのか、ただの偶然か。六人分の台所でスープを煮ながら、私は意味のないリズムを意味のないまま聞く。
月瀬 灯2026-09-06最後の夏服
【短編小説/青春ミステリー】廃校前の文化祭で展示する制服が、毎夜一着ずつ別のサイズへ縫い直される。被服部の私は、卒業名簿に載らなかった生徒と、本人の同意なく残された服へ辿り着く。記憶することは所有することではない。最後の夏服に針を入れる手が、誰のための展示かを問い直す。
月瀬 灯2026-09-06石の森の獣医師
【短編小説/生態ファンタジー】昼は石像、夜は動物へ戻る白環森で、三頭の鹿が石のまま目覚めない。巡回獣医師の環は病気と判断して石の皮膚を切るが、それは森全体が胞子を運ぶ繁殖の時間だった。治療する手が生態を壊したとき、獣医は傷を縫い直せるのか。石工と森へ入る一夜。
月瀬 灯2026-09-06羊皮紙の天気
【短編小説/書簡ファンタジー】明日の天気が染みとして現れる羊皮紙。見習い予報官の私は、命令されてもいないのに領主の婚礼へ「晴れ」を書き足す。名前を覚えてほしかったからだ。だが紙が読んでいたのは空ではなく、触れた人々の身体だった。届かなかった雨と、宛名のある告白をめぐる七通の手紙。
月瀬 灯2026-09-06庭師は雪を数えない
【短編小説/心理ミステリー】雪の朝、名家の離れから仏像が消えた。庭に足跡はない。七十四歳の庭師・源造は、温水管と枝を伝えば雪へ触れずに渡れると知っていた。疑いは孫へ向くが、それこそ源造が望んだ筋書きだった。家も庭も家族も自分の手で整えたい男が、凍った池の前で制御を失う。
月瀬 灯2026-09-06ラジオ塔の十一秒
【短編小説/技術ミステリー】地方FMで毎晩、同じ時刻に十一秒の無音が入る。その無音を聞いたリスナーだけが、まだ起きていない事故を通報してくる。音響担当の環は送信遅延と開いたままのマイクを調べ、誰かの犯罪と自分の耳鳴りを同時に追う。塔から音が消えたあとも、十一秒だけは彼女の内側に残る。
月瀬 灯2026-09-06踊り場の女王
【短編小説/団地ミステリー】青葉台団地では、なくした物が三日以内に戻ってくる。返された品には黄色い紙の王冠。六年生の私は〈踊り場の女王〉を追うが、母の財布だけは帰ってこない。離婚も家計もよく分からない子どもの目が、大人の秘密と優しい嘘を見抜いていく。王冠は最後まで、つぶさない。
月瀬 灯2026-09-06火葬場で待つ犬
【短編小説/犯罪ミステリー】身寄りのない老人の火葬日、乾いた毛の犬が裏口へ現れる。赤い首輪の鍵が結ぶのは、数十年前の現金輸送車強盗と、老人が払い続けた動物病院の領収書。火葬技師の私は秘密を遺族へ返すべきか迷い、最後に鍵を自分の靴へ隠す。正しさより重いものを残す一日。
月瀬 灯2026-09-06海図にない故郷
【中編小説/航海冒険ミステリー】遭難から生還した航海士ユナは、自分の故郷がすべての海図から消えていると知る。彼女が救助隊へ送った座標も、実は故郷ではなかった。古い船主と元密輸人を乗せて再び海へ出たユナが見つけるのは、島ではなく移動し続ける船団。故郷へ帰るためについた嘘が、航路を開く。
月瀬 灯2026-09-06夜を輸出する国
【中編小説/産業ファンタジー】島国は夜を採掘し、眠れない大陸へ輸出している。採掘所で監督官レナの遺体が発見され、労働者が犯人にされた。ところが死は、国を止めるため彼女自身が仕組んだ殺人劇だった。奪われた夜が帰れば人は眠れる。作物は育たない。正義の夜が島へ落とす、濃すぎる影の物語。
月瀬 灯2026-09-06骨笛の巡礼
【中編小説/ダークファンタジー】嵐を鎮めるため、十二の村が獣骨の笛を神殿へ納める国。若い笛職人ナギは、今年の一本に二人分の人骨が混ざっていると見抜く。一人は殺された測量師、もう一人は自ら骨を差し出した母。完全な音を鳴らすには誰かの人生を使わなければならない。ナギはあえて欠けた笛を選ぶ。
月瀬 灯2026-09-06空室の家族
【中編小説/家族ミステリー】集合住宅を撮る写真家・真帆は、十五年間空室のはずの四〇七号室で濡れた食器を見つける。そこには、失踪した姉のための席が用意されていた。姉は死んだのか、それとも生きて帰れないのか。父の支配と善意の家族ごっこが絡む部屋で、真帆は誰の許可も得ずに作られた「帰る場所」を撮る。
月瀬 灯2026-09-06午前四時の採用面接
【中編小説/密室心理サスペンス】深夜の研修施設へ集められた七人の最終候補者。午前四時、面接官は十年前の工場火災について一人ずつ質問を始める。通信は途絶え、履歴書の名前と記憶が食い違っていく。これは採用試験なのか、復讐なのか。夜明けまでに選ばれるのは社員ではなく、火災を語る役目だった。
月瀬 灯2026-09-06鏡にだけ映る証人
【長編小説/法廷幻想ミステリー】鏡が、その部屋で最後につかれた嘘を四秒だけ映す町。殺人現場の鏡には被告人ではない影が残ったが、法廷は鏡像を証拠と認めない。勝つためなら鏡さえ出し抜けると考えた弁護士は、証言の順番を組み直すほど、自分も事件の観客ではなかったと知る。
月瀬 灯2026-09-06昼のない港
【長編小説/海洋幻想ミステリー】一年の大半が薄明に沈む北方港へ、十三年前に失踪した船が帰ってきた。乗員数は同じなのに船名だけが違い、船長は船室で死んでいる。港湾検査官リナは、港が他国から盗み続けた「昼」と、自分が黙認した航路へ行き着く。最後の十一分、彼女は港のすべての灯を消す。
月瀬 灯2026-09-06獣道の地図師
【長編小説/冒険ファンタジー】巨大獣の渡りで川も街道も動く大陸。地図師ユラは帝国測量隊長の死を追い、自らが描いた美しい直線が谷を飢えさせ、獣を殺していたと知る。殺人者は誰か。正しい地図は誰のためにあるのか。国境と獣群が迫るなか、ユラは自分の署名が入った原版を火にかける。
月瀬 灯2026-09-06灰冠の女王
【長編小説/政治ファンタジー】戴冠式で王女ナディアに現れるはずの〈灰冠〉が、地方徴税官イリヤの額に宿った。反逆者とされた王女は、灰冠が鉱夫の寿命で燃える仕組みと、儀式を変えた者を追う。だが最後に彼女が向き合うのは王国の罪だけではない。王位を望んでいないふりをしてきた、自分自身の欲望だった。
月瀬 灯2026-09-06送り火の検地帳
【長編小説/歴史ミステリー】飢饉後の山間藩で庄屋が殺され、現場には存在しない集落の年貢割付状が残された。寺の書役・千世は、検地帳と送り火の数から消された村を探す。しかし帳面の不正を追う彼女にも、真実のためには不要だった一行の偽書がある。十三番目の火が、名を奪われた者と書いた者の罪を照らす。
月瀬 灯2026-09-06